Sonosが新しく出したワイヤレスヘッドホン「Sonos Ace Ultra」は「7万円級フラッグシップ」らしい要素が一通り揃えられています。
カスタム設計の40mmドライバー、10基マイクのアクティブノイズキャンセリング、空間オーディオとDolby Atmos対応、ダイナミックヘッドトラッキング、そして最大35時間のバッテリー駆動。
デザインもSonosらしいミニマル路線で、4色展開となっていて、ぱっと見は「ソニーWH-1000XM6」「Bose QuietComfort Ultra Headphones(第2世代)」「AirPods Max」と真っ向から戦う製品となるでしょうね。
音はバランスが良く、ステレオの分離も音場の広さも好印象のようですが、同価格帯で比べると、ソニーのWH-1000XM6ほどの完成度ではないようで、BoseのQuietComfort Ultra(第2世代)と比べても「わずかにBoseが上」という感じ。
ANCも「しっかり効くけれど、このクラスの最高ではない」程度で、地下鉄や飛行機では騒音はかなり抑えられるものの、話し声や機内ノイズはそれなりに残るようで、価格が3万円台のNothing Headphone 1と同じ中堅クラスレベルのような感じ。
では、Ace Ultraはいったいどこで勝負しているのか?
その答えが、SonosらしいWi‑Fi連携で、ヘッドホン側には「Headphone Engine 2」と呼ばれる新ハードウェアが入り、Sonosシステムに直接つながる「ヘッドホンリンク」機能を初搭載。
右イヤーカップの「コンテンツキー」を押すだけで、Ace Ultraで聴いている音を、家中のSonosスピーカーへ送り出したり、その逆に引き戻したりできるのだとか。
家に帰ってヘッドホンを外した瞬間、同じ曲がそのままリビングのSonos PlayやEra 100 SLから流れだすなんてことが、ちょっと未来感があっていいですね。
さらに、Wi‑Fi再生中、Sonosアプリ側からAce Ultraを他のスピーカーと同じように操作できるようで、サウンドバーとの音声の行き来ができるTV Audio Swapも健在で、夜中に家族を起こさず映画に没頭したいときなんかには便利ですね。
これらは、Bluetoothヘッドホン単体ではまず実現できない体験ですし、「家中の音を一つのエコシステムで管理する」というSonosの思想がヘッドホンにも降りてきた形。
もちろん、いいことばかりではないようで、ヘッドホンリンクやWi‑Fi連携はまだアーリーアクセス扱いとなっているようで、ボタンを押しても切り替わらない、アプリ上で再生先を変えた際にスピーカーの同期が崩れるといった不具合もあるようですね。
少しグレーがかったブルーの「Agave」をはじめとする4色展開は、Sonosスピーカーと同じく主張しすぎないミニマルさで、マットな質感も上質となっているのですが、どうやら指紋はつきやすいよう。
ここまでを見てくると、このヘッドホンの価値は、単体で7万円のいい音を出すかどうかで判断するよりも、自宅にどれだけSonos製品があるかで大きく変わってきそう。
すでにSonos PlayやEraシリーズ、Sonos Beam Ultraなどがあり、「部屋を移動しても同じ音楽を途切れさせたくない」「夜はサウンドバーの音をそのままヘッドホンに切り替えたい」といったニーズがある人にとっては、とても魅力的な選択肢になりそうですが、家にSonosスピーカーがひとつもなく、ヘッドホンはスマホやPCとつないで音楽を聴くだけという人にとっては、Ace Ultraの“いちばんSonosらしい部分”はほとんど無駄になりそう。
その場合、より強力なANCと快適な装着感を持つBose、音質で一歩抜けているソニーやAirPods Maxなど、別のフラッグシップを選んだほうが、価格に対する納得感は高くなるかも。
Sonos Ace Ultraは、7万円の“究極のヘッドホン”というより、Sonosエコシステムにどっぷり浸かるための高級リモコンのような存在。
音質やANCだけで冷静に比較すると強豪ぞろいの中で突出するわけでもなく、「家でSonosを使い倒している」「スピーカーとヘッドホンをボタン一つで行き来したい」という筋金入りのSonosファンにとっては、このWi‑Fi連携こそが選ぶ理由に。
Ace Ultraの評価は、家の中にすでにどれだけSonosがあるかにかかっていそう。
